見学で見えるのは、その場所の一番良い顔。でも、それでいいのかもしれないとも思う。
見学で見えるのは、一番良い顔
見学の日、事業所は一番良い顔をする。掃除が行き届いて、職員さんの声かけも丁寧で、利用者たちも穏やかだ。それは悪いことではなくて、当たり前の礼儀なのだと思う。
ただ、見学だけでは見えないものもある。休んだ日の空気がどう変わるか。欠勤の連絡をどう受け止めてくれるか。休んだ日の扱いで、事業所との相性が見えるに書いた通り、そこは入ってみないと分からない部分だ。
見学で見えた良い顔を信じてもいい。でも、「見学の日は良い顔だったのに」という後悔を聞くのも、また事実として覚えておいてほしい。
通っている側から見ているもの
見学に来た人を見ていると、作業の手順よりも先に、あるものを見てほしいと思う。それは、休んだ人が翌日どうやって戻ってくるか。困ったときに、誰に何と言えば相談できるか。
作業内容はパンフレットにも載る。けれど、空気の使い方は載らない。相談するほどではないけど、ずっと残る作業所の違和感に書いたような、小さな引っかかりの扱い方が、実はその場所の本質を決める。
見学の時間では、そこまでは見られない。だからこそ、見学の後に一度だけ、通っている人に話を聞ける場があればいいのにと思う。
聞けることと、聞きにくいこと
見学中に職員さんへ聞けることは多い。作業内容、通所日数、費用の目安。制度の話なら就労選択支援という言葉に、少し身構える話にも書いた通り、入口で整理してくれる窓口もある。
一方で、利用者さん本人に聞きにくいこともある。「つらいときはどうしていますか」「辞めたくなったことはありますか」。見学の場では、どれも空気が重くなる質問だ。
こういう質問のリストは、通所のしんどさを、制度と研究で読み直したい人へにまとめた問いの形と合わせて、見学前の準備として使ってもらえたらいい。
緊張している人へ伝えたいこと
見学に行こうか迷っている人に伝えたいのは、挨拶さえできれば十分だということだ。上手な自己紹介も、鋭い質問も要らない。ただ来て、座って、雰囲気を感じて帰れたら、それで見学の役割は果たせている。
メモを一枚持っていくといい。聞きたいことを三つだけ書いて。緊張すると全部飛ぶから、書いてあることに助けられる。
そして、一日で判断しなくていい。見学は面接じゃない。こちらも選ぶ側なのだから、数か月かけて、何度でも考え直していい。
入ったあとも、見学の日の気持ちを覚えていてほしい
これは、事業所側への小さな願いでもある。入ったあとの利用者が、見学の日の緊張を覚えているように、受け入れる側も、あの横顔を覚えていてほしい。
契約更新の時期になると、少し息を止めるに書いた不安も、行きたくない朝の重さも、見学の日には見えない。見えないものがあることを、両側が知っている場所こそが、居心地の良い場所なのだと思う。
見学に来る人の顔を思い出す朝は、私にとって自分の原点を確認する朝でもある。
見学の次の段階として体験を利用する場合の話は、体験利用の人が、隣の席に来た日のことにも書きました。
見学しようか迷っている人へ
見学しようか迷っているなら、まずは一度だけ行ってみてほしい。入ることを決めるためではなく、「自分がどんな顔になるか」を知るために。
緊張のあまり何も見られなかったとしても、それも情報だ。二回目に行くときは、たぶんもう少しだけ見える。
そのとき、通っている側の誰かが、あなたの横顔をそっと覚えていてくれる。そういう場所でありますように。
見学のときに何を聞くべきか、具体的な質問リストが必要なときは、就労アトラスのA型・B型の見学で聞くことリストがあります。ここでは書かなかった、確認事項の側です。