聞けば集中できるのに。聞けない自分がいるのは、ルールのせいじゃなくて、聞く勇気がないから。
聞けない理由は、遠慮じゃなくて規則
「聞いてもいいですか」と聞けば、たぶん許可してもらえる。「状況に応じて判断します」と言われるかもしれない。それなのに聞けないのは、遠慮だけが理由じゃない。
「他の利用者さんとの兼ね合いがあるので」「作業に集中できなくなりますので」。こういう理由を聞いたら、それ以上踏み込めなくなる。正論だからだ。
正論で断られることと、実際に試させてくれないことは、違うのだと思う。
感覚の強さは、人によって違う
同じ作業室でも、全く気にならない人と、耐えられない人がいる。これは我慢の足りないとか、協調性がないとかいう話ではなくて、感覚の処理の仕方が人によって違うというだけの話だ。
合理的配慮をお願いする前に、困りごとを言葉にするに書いた通り、困りごとを言葉にすることが第一歩になる。でも、音の問題は「うるさい」としか言いようがなくて、意外と説明しづらい。
「集中力が切れやすいので」の方が、受け取り方が柔らかいかもしれない。
聞くタイミングを逃し続ける構造
入所した最初の一ヶ月は、覚えることが爆発した時期で、環境の話をする余裕なんてなかった。二ヶ月目以降は、もう聞きにくい。三ヶ月目には、「今さら」と思ってしまう。
相談するほどではないけど、ずっと残る作業所の違和感と同じ構造だ。大きなトラブルではないからこそ、タイミングを逃し続ける。
逃し続けた結果として、今もイヤホンなしで作業をしていて、毎日少しずつ疲れが溜まる。
戦わない付き合い方
イヤホンがダメなら、耳栓はどうだろう。小さな耳栓なら目立たないし、周囲の音を減らす効果もある。完全な解決ではないけれど、何もしないよりはましだ。
週何日通えれば、ちゃんとしていることになるのかに書いた通り、完璧を目指さずに続けることが大事だと思う。環境調整も同じで、一部だけでも改善すれば全体の負担は下がる。
戦って勝つ必要はない。少し楽になって、通所が続くなら、それでいい。
使いたい作業と、聞いておきたい声のこと
イヤホンが必要なのは、作業中いつもとは限らない。決まった作業のときだけ音楽を聞きたいのか、呼びかけや作業指示をどんな場面で受け取る必要があるのか。耳栓や席の移動も含めて、使いたい場面から話すと、道具の名前だけで相談が終わりにくい。
JEEDが掲載する2020年度の一社の雇用事例では、本人の申し出でノイズキャンセリングイヤホンを使い、呼びかけに気づけるよう、その会社で正面から合図して話す運用が紹介されています。この例を、そのまま通所先の決まりに置き換えることはできません。相談するときは、使いたい作業や場所と、呼びかけや指示をどう受け取るかも一緒に確かめたいです。
たとえば、「この作業で音楽を聞くためにイヤホンを使いたいです。呼びかけや作業指示に気づける方法も含めて相談できますか。難しいときは、耳栓や席の変更など別の方法も考えたいです」と伝える言い方があります。これは作者が考えた相談例で、うまくいった体験談ではありません。口で切り出すのが難しければ、使いたい場面と困る音を短く紙に書いて渡す方法もあります。
同じ空間で我慢している人へ
イヤホンを使いたくても使えずに数ヶ月が過ぎている人は、我慢強い。同時に、我慢しなくてもいい方法を探す権利もある。
環境調整は特別扱いではなくて、作業を続けるための道具のひとつだ。眼鏡をかけるのと同じくらい自然なこととして扱われていい。
まだ聞けていない人は、次回の面談で一言だけ言ってみよう。それができない日は、このページを読んで呼吸を整えてほしい。
音や環境の調整を合理的配慮として整理したいときは、就労アトラスの合理的配慮とは?障害者雇用で伝えること・伝えすぎないことがあります。イヤホンの一件は、配慮の話の入り口の一つになり得ます。